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【珍の探求:其の24 ピンゲラップ島】

 先日の大雪、大阪では11年ぶりの積雪量だったらしいですね。
 大雪などめったにない土地に住んでいるもので、個人的には、嬉しくて嬉しくて仕方なかった訳です。
(豪雪地帯にお住まいの方にしてみれば、お気楽すぎる発言だと思いますけども)

 喧噪とアルコール臭漂う街ですら、雪が降ると清潔に見える。

  ◇

 さて。
 前回のエントリー【珍所:其の41 Google Earthで島巡り】 で、米軍の基地になっているマーシャル諸島・クェゼリン環礁と、米軍の基地化に伴い、元々住んでいた島民が押し込められたエベイ島について少し書きました。
 周辺のことを調べていくうちに、なかなか面白そうな本がありましたので、amazonで購入。


オリヴァー サックス 『色のない島へ―脳神経科医のミクロネシア探訪記』 (早川書房・1999)
(原書は"The Island of the Colour-blind" (1997))

 映画『レナードの朝』の元ネタとなった神経学者オリヴァー・サックスが、先天性全色盲の患者(マスクン)が集団で暮らすミクロネシアのピンゲラップ島を訪れ、どのような社会生活が営まれているかを書いている。
 著者の南海に対するロマンチックな憧れが原動力となってはいるものの、ミクロネシア諸島を覆う厳しい現実なども分かりやすく書かれており、驚くほど読みやすい。
 また、サックスの旅にノルウェーの科学者で、自身も全色盲者のクヌート・ノルドビー氏が同行していることが、この本を面白くしている。
 もしサックスだけが島を訪れていたならば、健常者(この言葉は好きではないですが)が、ピンゲラップ島のマスクン達が見ている世界を想像で補うしかなかっただろう。
 しかし、ノルドビーが全色盲の立場からマスクンの世界を解説してくれるので、それこそ鮮やかに彼等の世界が浮かび上がってくる。


ピンゲラップ島
(写真はGoogle Earthより)

 全色盲になる確率は、3万人に1人と言われている。(Wikipedia「色覚異常」によると、10万人-20万人に1人)しかしピンゲラップ島においては、島の人口の3分の1が全色盲の遺伝子を有しており、12人に1人が全色盲者である。
 サックスによると、原因は1775年頃にピンゲラップ島を襲ったレンキエキ台風にあるという。
 この台風で島民の90%が犠牲となり、それに続く飢餓も重なったことで、1000人近くあった人口が、最終的にわずか20数人にまで減ることになる。
 人口減少による近親婚で、それまで稀だった疾病の遺伝子が広がったのだ……と、サックスは本の中で述べている。

 原因の真偽はおいといて。
 外の世界ではマイノリティにならざるを得ない人々が、この島ではそうではない。
 この島ではマスクン=全色盲者が特別視されず、当たり前の生活を営んでいることに、オリヴァー・サックスとクヌート・ノルドビーは言及している。
ピンゲラップの住民は全色盲かそうでないかを問わず誰もがマスクンのことを知っていて、マスクンが生活していく上で耐えなければならないのは色が分からないことだけでなく、眩しい光であり、細かいものが見えないことだとも知っている。ピンゲラップの赤ん坊が激しくまたたきしたり光から目を背けたりしたときには、周りの人には医学的なことは分からなくても、少なくともその赤ん坊がなぜそうするかについての知識がある。そして赤ん坊が必要とするものやその子の持つ能力についての知識もあり、その症状を説明する神話までが用意されているのだ。そうした意味で、ピンゲラップ島全色盲の島である。この島で生まれたマスクンの人は、自分が完全に社会から孤立していたり無理解にあっていると感じることはないだろう。ところが、島の外の世界では、先天的な全色盲の人はみなそうした苦しみを味わっているのだ。

オリヴァー サックス 『色のない島へ―脳神経科医のミクロネシア探訪記』p.117より抜粋

 なかなか美しいのは、夜釣りのシーン。
 マスクン達は強い光には弱いが、わずかな明るさの違いにはとても敏感に反応できる。彼らは自分達の能力を生かし、夜釣りの漁師をしている。
 暗くなるにつれ、クヌートや島の全色盲の人々は動き易くなるようだった。
(中略)
彼らの多くは夜釣りの漁師として働いている。そして夜釣りにかけては全色盲の人たちは極めて優れていて、水の中の魚の動きや、魚が跳ねるときにひれに反射するわずかな月の光まで、たぶん誰よりもよく見えているようだった。
(中略)
 八時頃、月が昇った。満月に近く、その明るさで星の光が見えなくなってしまうほどだった。何十匹ものトビウオが海面からいっせいに飛び上がり、また音をたてて海に飛び込む。夜の太平洋は夜光虫でいっぱいだ。夜光虫は蛍のように生物発光を行う原生動物である。海中の燐光は水がかき回されたときに最も見えやすいのだが、それに最初気づいたのはクヌートだった。トビウオが水から飛び出すと、あとに光の線が続いて輝く航跡が見え、飛び込むときにもまた水が輝く。

オリヴァー サックス 『色のない島へ―脳神経科医のミクロネシア探訪記』p.77-78より抜粋

 ずいぶん昔にどこかのサイトで、色覚障害の方が「私には桜が白く輝いて見える」と言っていたのを思い出した。
 白く輝く桜。それも良い。

  ◇

※文章中で「色盲」「色覚障害」などの言葉を使っていますが、あくまでも便宜的に使っていることを御了承下さい。
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