Entries

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
この記事に対してトラックバックを送信する(FC2ブログユーザー)
http://12v.blog89.fc2.com/tb.php/6-d53c0a8f

-件のトラックバック

-件のコメント

コメントの投稿

投稿フォーム
投稿した内容は管理者にだけ閲覧出来ます

【珍書:其の30 Vox Pisces 魚の書物】

 先日ご紹介した、庄司浅水『奇本・珍本・本の虫』(学風書院)から、もうひとつ、本に関する珍事を転載します。

 西暦1626年の真夏の夕、イギリスはケムブリッチの市場に鱈の切売がはじまった。エプロン姿のお内儀さん連中が……いたかどうか知らないが……夕食のおかずにしようと云うわけ。
 所が、その鱈を切っていくほどに、気胞のところに何か硬い物がある。はて、何だろうと注意して見ると、何んと驚いたことに、犢皮紙装幀の十二冊の本だ。
 臓物と一緒に腹から引き出すと、頁はジエリーで固著し、古めかしい魚の香がする。早速洗って見ると、正しく立派な書物だった。

 其処に居合わせたベンジャミン・プライムという男が、当時、書誌学者として聞え高かったシドニー・サセックス大学の学長サミュエル・ワード博士の許に持参した。
 博士は注意深く頁を開いて見ると、中に三つの論文があった。即ち「死への準備」、「知識の宝庫」、「姿見、一名己を知る鏡、死を畏れずして死することを教うる書」、博士はこれはヘンリー八世の治世に作製されたものであろうと云ったが、アントニィ・ウッドはリチャード・トレーシイの作で、一五四〇刊クロムウエル公トーマスに献ぜられたものだと主張している。
 同書は後に『ボックス・ピイシス、一名魚の書物』として再刊されたが、それには「一六二六年真夏の夕、ケムブリッチ市場に於て、鱈の腹より発見せられたる三つの論文」と副標題が付してあった。
(後略)

(※漢字・送り仮名など本文そのまま。改行は12v電源が適宜改行)
 魚のお腹から、本が出てきたという話です。
"Vox Piscis"とか、"The Book-Fish"とか呼ばれているようで、海外では結構有名な話みたいです。

 庄司浅水『奇本・珍本・本の虫』には「ボックス・ピイシス」としか無かったので、最初、"Box Piscis(魚の箱)"だと思って検索しまくり、全くヒットしなかったので、てっきり偽情報かと思ってしまいましたよ。申し訳ありません、庄司先生。
"Vox"はラテン語で「声」という意味らしいですね。
 魚の声。

Wikipedia"Vox Piscis"(英語)や、Wilson's Almanac on the Book-Fish(英語)に書かれてあることから、少し情報を追加すると、

 Vox Piscesに、最初に気づいたのは、Joseph Medeという神学者みたいです。
 彼が市場を歩いていると、何やら騒ぎが聞こえてきた。行ってみて訊くと、鱈の腹から本が出てきたという。
 その場に居合わせた医者が、丁寧に鱈の胃袋から本を取り出したところ、表紙や一部は溶けていたが、中の方は大丈夫だった。
 そしてすぐに、ベンジャミン・プライムの手に本が渡ったようです。
(あとは、上の『奇本・珍本・本の虫』に続く)

 魚のお腹に入っていた書物ですが、今では、プロテスタント殉教者John Frith(ジョン・フリス)の物だと考えられているようです。
 フリスは、禁止されているプロテスタントの本を配布した罪で、1533年7月4日に火刑に処せられた人のようです。
 彼は、今でいう学生運動で摘発され、オックスフォード(ケンブリッジではなく)の地下に閉じこめられた(らしい)。
 なぜ鱈がこの本を飲み込んでいたのかは、未だに謎らしいです。
 死んだ鱈は、ダイイング・メッセージを残さなかったのでしょう。

 そして、人の手で再刊された本が、こちら。
[Vox Piscis or the Book-Fish, containing three treatises found in the belly of a codfish in Cambridge market]
(『ボックス・ピイシス、一名魚の書物 ─ 一六二六年真夏の夕、ケムブリッチ市場に於て、鱈の腹より発見せられたる三つの論文 ─』)


 それにしても、魚は、本が出てくるに相応しい生物ですね。
 ついでに、魚はキリストの象徴でもありますし、そこから神学関係の書物が出てくるのは、なかなか浪漫のある話です。
スポンサーサイト
この記事に対してトラックバックを送信する(FC2ブログユーザー)
http://12v.blog89.fc2.com/tb.php/6-d53c0a8f

0件のトラックバック

0件のコメント

コメントの投稿

投稿フォーム
投稿した内容は管理者にだけ閲覧出来ます

Appendix

プロフィール

12v電源

Author:12v電源
読み方:ジュウニボルトデンゲン
信 条:てきとう
過去ログ倉庫

このサイトは、管理人(12v電源)が、日本各地の珍所や珍書や珍品を探しつつ、フトした疑問などを追求したり諦めたり投げ出したりしているサイトです。
全国各地の「ポツンとした物」を探す、自称”ポツニスト”。

y_3dan2000■yahoo.co.jp
お手数ですが、メールを送られる場合は、
「■」を「@」に置き換えて下さい。

ブログ内検索

QRコード

QRコード

RSSフィード

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。