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【雑絵:其の38 真夜中の葬列】

souretu.jpg
先払いの鈴が聞こえたら、外へ出てはいけない。


鶴岡の城下に大場宇兵衛という武士があった。其の大場は同儕の寄合があったので、それに往っていて夜半比に帰って来た。北国でなくても淋しい屋敷町。其の淋しい屋敷町を通っていると、前方から葬式の行列が来た。夕方なら唯(と)もかく深夜の葬式はあまり例のない事であった。大場は行列の先頭が自分の前へ来ると聞いてみた。
「何方のお葬式でござる」
 対手は躊躇せずに云った。
「これは大場宇兵衛殿の葬式でござる」
「なに、おおばうへえ」
「そうでござる」
 行列は通りすぎた。宇兵衛は気が転倒した。そして、家へ帰ってみると、玄関前に焚火をしたばかりの痕があった。それは葬式の送火であった。
 大場は其の晩からぶらぶら病になって、間もなく送火を焚かれる人となった。


田中貢太郎『葬式の行列』
青空文庫<http://www.aozora.gr.jp/cards/000154/files/42274_16442.html>より転載
底本:「怪奇・伝奇時代小説選集3 新怪談集」春陽文庫、春陽堂書店
   1999(平成11)年12月20日第1刷発行

「大場宇兵衛」は、「大場宗平」説もある模様。
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